★「こどもあつめ」vol.5 鳥井雪さん★

わくわくキッズのインタビュー企画「こどもあつめ」

第5回目のゲストは プログラミング教育絵本「ルビィのぼうけん」の翻訳者であり、自身もRailsプログラマーの 鳥井 雪(とりい ゆき)さんです!

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鳥井 雪  TORII YUKI

《プロフィール》

リンダ・リウカス著のプログラミング教育絵本『ルビィのぼうけん』を翻訳、プログラミング教育必修化にむけての一助となる。女性にプログラミングの技術を解放する世界的ムーブメント「RailsGirls」の、日本でに普及にも尽力しその功績を認められ、2013年楽天テクノロジーアワード ルビー賞受賞。

Q.小学生のときはどんなお子さんでしたか?

教室の端っこの方で本を読んでいるような、おとなしいタイプの子どもでした。父親の影響でミステリーが好きで、小学校高学年のとこからずっとミステリーばかり読んでいました。江戸川乱歩やルパンにはじまり…定番の赤川次郎も読んでいましたね。

母親が働いていて、父親は単身赴任で家ずっといなかったので、かぎっ子でした。学校から帰ったら、とりあえず本を広げていました。楽しく読んでいたらいつの間にか日が暮れていて、辺りも暗くなっていて、母が真っ暗な部屋を開けてびっくりする…ということをよくやっていました。

「ゆきちゃん、どうして電気つけないの?」と言いながら、電気をつけてもらうのが好きでした。今思うと好きなものに没頭していたのだと思います。

Q.好きだった給食はありますか?

それが思い出せなくて…(笑) 給食は私たちの時代あまりおいしくなかったんですね…ぎりぎりコッペパンは好きでした。パンをよく噛んでいると甘くなる…というのが良かったんだと思います。ときどき「オムレット」という、ふんわりした生地の中に凍らせた生クリームがはいっているのは、好きだったと思います。

甘いものだと「安定して美味しい」という感じでした。

Q.苦手だった給食はありますか?

今でもマヨネーズが苦手で、それがはいっているものは軒並みダメでした。でも残したらダメな文化で、最後まで食べなくてはいけなかったので泣きながら食べた思い出があります。「大人になるとマヨネーズを食べなくても良い」というのが、大人になって良かったと思うことです! 嫌いなものは食べなくても大丈夫、食べるものは最初から選べる、大人になると楽しいよ、というのを伝えたいですね(笑)

あとはチーズがすごく苦手で、チーズのことをずっと嫌いだと思っていました。でも大人になって食べてみると、これは美味しくて「もしかして給食のチーズが美味しくなかっただけなのでは?」と恨みに思っているところです(笑)

まあ、大人になって味覚が変わった…というのもあると思うので、何もかも給食のせいではないと思います。

今の子どもの給食の献立を見てみると「結構美味しそうだな」と思ってみています。

Q.好きな教科・苦手だった教科を教えてください

好きな教科は間違いなく「国語」です!国語は話を読むのが楽しくて、3つ上の兄の教科書も国語だけは勝手に読んでいました。新学期にもらった国語の教科書の話を全部読んで、足りなくなったので兄の教科書を読んで…という感じでした。完全に読書の一環ですね。物語文も説明文も分け隔てなく、楽しく読んでいました。

私は本当に文系だったので、中学校からは数学が苦手になっていくのですが、小学校のときは、特にそういったことはなかったです。算数のつるかめ算は、解くのが楽しかった覚えがあります。音楽はあまり得意ではなかったような気がします。私、音痴なんですよ…(笑)だからその時は気づいていなかったのですが、ほとんど外れた歌を歌っていたような気がします。頭でっかちだったんですね…。

中学・高校は、国語の派生の古文と漢文、英語が好きで、本当に「文章」というか、「テキスト情報」が好きな人でした。

Q.本を読む、文章を読む魅力について教えてください。

自分と切り離した新しい世界というか…本の中にある世界に浸れるということが、自分にとって良いことでした。没入感がすごいんでよね。でも、自分が(本の中の)主人公になるという感覚ではなく、映像を見ているときのような、そこに展開している世界を観客として楽しむような感じです。まあ、ミステリーは(自分自身に置き換えて)共感して読むようなものではありませんからね(笑)

Q.本が好きで自他ともに認める文系の鳥井さんが、プログラミングのお仕事をするきっかけは何だったのですか?

就職するときに、ベンチャー企業の営業職を受けたのですが、面接で「この子、営業に向いてないのでは…」という空気が流れていました。その場で技術職の責任者の方と話して「では、うちの技術部にきなさい」と、技術部で採用されました。それから(プログラミングについて)勉強したんです。

それまでプログラミングの「プ」の字も知りませんでした(笑)

文系って、わりとプログラミングに向いてるところがあるなと思っています。コンピューターって融通がきかないんですよね。プログラミング言語という、一つの表現にたった一つの意味しか持たない厳密な言い方で、ただしく指示しないと思った通りに動いてくれない。けれど実際は、それを作りたい人間はあいまいな人間の言葉で考えて、人間の言葉で話しているんです。

プログラマーは、そんな風の人間のふわふわとした言葉を聞き取って整理し、抽象化して、コンピューターに教えてあげる。そういう仕事です。そういった意味では、(人間とコンピューターの)橋渡しのイメージがあります。文系というか、言葉が得意な人は(プログラミングに)向いていると思います。

この辺りはあまり注目されないのかもしれませんが、コンピューターを使いたいのは人間なので「人間がどういう風に使いたいか」を考えることも、すごく大事なところだと思います。

(質問:「想像力」ということですか?)

想像力が大きすぎるのもあまり良くなくって、勝手に相手の気持ちを忖度して作っちゃうとずれる時もあるんです。ある程度形になったら「こういう感じですか?」と(クライアントさんに)すり合わせていくのが大事かな、と思っています。結構コミュニケーション能力もいるんです(笑)

Q.印象に残っている先生はいますか?

それは良い印象と悪い印象とどちらでしょうか…?(笑)

実は私、小学校6年間で2人の先生にしか担任されていないんです。1~4年生はベテランの女性の方で安心して過ごしていました。5・6年生は新任の男性の先生でした。こちらも反抗期ということもあって、体育会系の「みんなで一緒に遊ぼう!」という先生と、全然そりが合わなくって…(笑) 大変だったなぁという思い出があります。

「みんなで遊ぼう時間」というものがあって…週に3回くらい休み時間にみんなで遊ぶ時間が定められているんです。この時間は、クラスみんなでドッチボールやけいどろをやらなくてならなくて。けいどろはわりと好きだったんですが、強制されてやらされるのが嫌いでした。だから、その時間は仲が良い友達と絶対見つからないような場所でずっとしゃべりこんでいました。新任の先生には、扱いにくい子供だったと思います(笑)

左:鳥井さん 右:あべ

Q.今後のインターネットと子ども達の関りについて教えてください。

小学生だと先生や教室の雰囲気が、自分の生活の中で(割合が)すごい高いじゃないですか。大人だと、1つのところで嫌なことがあっても、うちに帰れば大丈夫、友達と話していれば大丈夫、といくつか基地がと思うんです。でも小学校で嫌なことがあったら、家に帰ってもずっと考えてしまう…私はそういうタイプでした。だから「そこだけが世界じゃないんだよ」と、自分の子どもにはいろんな基地を作ってあげたいと思います。

現在インターネットの中は、閉ざされたコミュニケーションの場になっているようにも感じます。クラスの仲間内のライン…みたいに。インターネットとの付き合い方によって、自分の世界を広げることもできるし、よりクローズドになっちゃうこともあると思います。上手な付き合い方を色んな子に知ってもらって、安全に自分の世界を広げる方向に進んでほしいと思います。

Q.挫折したり壁にぶつかったりしたことはありますか?

いくらでもあります。そもそも私は正規の就職活動をしていなくて、就職シーズンが終わってもずっと本屋のバイトを続けていた時期もあります。順風満帆な人生ではないんです。自分が全然やると思わなかったプログラミングを始めたくらいなので、人生に全然計画性がないんです。

プログラミングを始めた時も、最初は本当に何も分からなかったです。英語は読み書き位はできたので、インドの開発会社の外注管理などをしていました。その時は、インターネットやプログラミングの専門用語が全然分からなくて、インターネットで調べました。手探りでしたが、その時の環境もおおらかで良かったです。

「やってみたらおもしろくて、いっぱいやってた」という感じでした。そんなにたくさん苦労しました、という感じではないんですね。多分、苦労は周りに掛けていたんだと思います。

その世界のことを少し知ると、今まで見えなかったところが、視界が開けるように少し見えていきます。少しずつわかっていくにつれ、自由になれる感覚があるんです。知れば知るほど、まだ自分の目の前にまだ知らない広い世界が広がっていくのが分かって。しかもプログラミングは自分が作ったように動いてくれるという確かな手ごたえがあるんですよね。(プログラミングを)やると、ちゃんと成果として目に見えるみたいな楽しさもあって、いつの間にかここまできちゃった、という感じです。

プログラミングに使う「ふわふわってしたものを整理して抽象化してまとめる」という考え方の癖をつけると、困ったときに「ちょっとずつやっていこう」という気持ちが起こります。そういった意味で(私は)わりとみんなにプログラミングをやってほしいタイプです。

(翻訳された)「ルビイのぼうけん」には、「手に負えない問題は、たいてい、小さな問題があつまってできている」という文言があります。「小さなことを組み合わせていくことで、大きなことができる」というのも、プログラミングの楽しさの1つなんですよね。

Q.ご両親から受けた影響はありますか

ものすごくあります。母は図書室の司書だったんですが、私の読書経歴には父が影響を及ぼしています。うちに本の部屋があって、本棚いっぱいにミステリー本がありました。父は単身赴任をしていたので、帰ってくるときに漫画も含めてものすごい量の本を抱えて持ってきてくれるんです。それをかたっぱしから読んで、その感想を伝え合うというコミュニケーションをしていました。それはすごく楽しかったです。

母は、文学少女タイプだったので、もっと文学っぽいものを読んでほしい空気を出していましたが…(笑) それでも「本を読むのが当たり前」という環境にしてくれたのは、母親のおかげだと思います。反対に、兄は活動的であまり本を読むタイプではなかったので、人間て不思議だなぁと思います(笑)

Q.座右の銘を教えてください

座右の銘、全然思い浮かばなくて(笑)

好きな言葉でいうと、(先ほど本の文言ででてきた)「大きな問題は、小さな問題に分割できる」ですね。

組み合わせる楽しさもあるんだよ、というところも知ってほしいです。

Q.プログラミングというお仕事とご自身に関して教えてください

もう十数年プログラマーっぽい仕事をしていますが、まだ飽きたことがないので楽しいんだと思います。

私は割と飽きっぽいところがあるので、ずっとやりたいことをやれているという実感はあります。

******今の子ども達にメッセージをお願いします。*****

私は、子どもの頃に将来の夢を聞かれるのがすごく嫌いでした。子どもだから世の中のことを分かっていないのに、その分かっていないことについて、この先のことを答えろというのがすごく嫌だったんです。

「まだ判断材料無いのに何言わせるの?」みたいな。

当時思っていた通り、今はまるで予想もしなかった職業に就きました。将来のことを頑張って考えても絶対分かるようなことではないので、今は自分の好きなことに集中して、自分の世界を広げられるよう、楽しく過ごしてくれるといいなと思います。あ、将来のことに目を向けることは大切だと思いますよ。でも、今の持っていることだけでは決まらないんだ、ということも感じてくれるいいですね。

最後は素敵な笑顔でパチリ。

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 鳥井さん、ありがとうございました😊

現在のご職業からは意外な?子ども時代の貴重なお話聞かせていただきました。

現代の子どもたちへの前向きなメッセージもぜひ多くの方にふれていただきたいですね。

わくわくキッズ 阿部 麻里

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